労働者は、労働契約にともなって、誠実に労務を提供する義務を負っています。これを「誠実義務」といいます。
この義務の中には、「企業の利益を不当に侵害してはいけない」ことも含まれていますから、企業イメージを損なう誹謗中傷をすることなども原則として許されません。
ただし、ブログに書かれた内容、誹謗中傷の程度、事実かどうか、企業が失った社会的信用の程度などによって、懲戒処分の程度も検討されなければなりません。
日本経済新聞社事件(東京地裁判決H14.3.25)では、新聞記者が自らのホームページに、仕事の取材で得た情報や、会社の誹謗中傷を不穏当な表現で書き込んだことを理由に、14日間の出勤停止を命じた懲戒処分を有効と認めています。
かなり悪質な誹謗中傷であっても、懲戒解雇までの重い処分は認められにくいと考えるべきでしょう。
まずは根気よく注意・指導をおこない、それでも改善されない場合に解雇が検討されることになりますが、この場合でも、懲戒解雇ではなく普通解雇を選択する方が得策です。
過去の裁判例では、経営者への誹謗中傷によって労使の「信頼関係が崩壊した」として、普通解雇を有効と認めているものがあります(「学校法人敬愛学園事件」最高裁判決H6.9.8)。