労働者から「会社を辞める」といった後に取り消しができるかどうかは、退職の申し出の効力が生じているかどうかで決まります。
具体的には、「退職届」と「退職願い」で考え方が変わります。
「退職届」は、一方的な意思表示として「退職します」と届け出るものです。
「退職願い」は「退職させてもらえませんか」と会社側の承諾を求めるものです。
「退職届」の場合は、使用者の承諾などなくても、民法の定める期間(2週間)が経過したところで退職の効力が生じ、取り消すことができなくなります。
ただし、完全月給制の場合は、月の前半に意思表示すれば翌月初日に、月の後半に意思表示すれば翌々月の初日に効力が生じるとされています。
一方、「退職願い」の場合は、使用者への合意解約の申し入れですから、これを使用者(人事権のある部長など)が受理(同意・承諾)していれば、労働契約解約の合意が成立するとされており、その時点から、労働者は退職を取り消すことができなくなります。
人事権のない係長などの上司が預かっている状態では、退職の効力が生じていないため、労働者が取り消すことも可能です。
後で取り消したいと言い出してトラブルになるのを避けるためには、人事権のある者が退職願いを受理した際に、日付を入れた受理印を書類に押しておくとよいでしょう。
退職の意思表示は口頭でも有効ですが、トラブルを避ける意味でも書面で提出してもらうようにしましょう。